振り込め詐欺との遭遇!(3)


「電話を代わるよ」とは言ったものの・・・。
本音を言えば、ホントは、私だって心細かった。
『世間知らずな私が、百戦錬磨の詐欺グループを言い負かすことなんて出来るのか?』
・・・けれど、もう後には引けない。
「どうしたらいいんだろう?」と、不安や迷いが、一瞬のうちに頭の中を駆け抜けたけど、
居ずまいを正し、電話を受け取った瞬間、不思議と腹が据わった。
・・・『今、彼を守れるのは、私しかいない!』


実は、前夜の彼からの電話の時点で、
『いざとなったら、私がサイト側と対決することになるかもしれないな』
という予感はしていた。
今の彼は不安感に押し潰されそうで、相手の請求を跳ね返せそうにない。
むしろ、「それから逃れられるのなら」と思うあまり、
架空請求と知りつつも、言われるままに払ってしまいそうに見えた。


それに。サイト側への対応の様子を見ていると、
最初こそ、毅然とこちらの言い分を伝えたものの、
次第に「はい・・・はい」「そうですね」と、相槌が増えていく。
・・・反論する気力がなくなっている。相手に完全にペースを握られているのだ。
その上、サイト側のアヤシゲな提案、である。
それを、半ばいぶかしがりつつも、積極的に連絡先をメモし始めるのを見て、
「このままじゃ、相手に呑まれる」
と、本気で思った。
・・・『今、彼を守れるのは、私しかいない!』


受け取った電話を耳元に持っていきながら、ふと考えた。
どうせ、サイト側(=振り込め詐欺の犯人グループ)は、
周到にマニュアルを用意して、ハッタリをふんだんにかまし
こちらの不安感を煽ってくるだろう。
それに乗らなきゃいい。
むしろ、
『むこうがハッタリをかましてくるなら、こっちもハッタリだよな?』
・・・そうそう。ちょっと状況を楽しむくらいの気持ちでね。


最初から、かましてみた。
「もしもし、お電話代わりました!●●の家内ですけど!」
・・・不安そうに見守っていた友人が、隣でずっこけた。
『いきなり、奥さんにならなくても!(笑)』と、ジェスチャーでツッコミ。
それを『まあまあ』と制しながら、
『良かった。ちょっとでも、気持ちがほぐれたみたいだ。』と、私もホッとする。
・・・それに。奥さん役になり切った方が、堂々と反論できるしね。


電話口に出た犯人は、甲高い声の、理系インテリ風な若い男だった。
言い回しが、訪問販売のセールストークみたいにねちっこい感じがした。
ただ。畳み掛けるようなトークは、どうも周到なマニュアルを読み上げてる感じだし、
特に、請求相手が詳しくなさそうな「電子商取引法」についての解説部分が、
やけに細かく設定された台本のようだった。
・・・逆に言えば。こちらがそれ以外の部分に予想外の揺さぶりをかければ、
犯人の話に矛盾が出てくる。
そこを一気に攻めれば、勝てる!
・・・気分はすっかり、「逆転裁判」(注:ゲーム)である。


(つづく)