振り込め詐欺との遭遇!(4)


いよいよ、サイト側との対決である。


こちらの戦術は決まっている。
「相手の話を真に受けないこと」
「相手が理論武装していない部分に『揺さぶり』をかけ、
矛盾を感じたらすかさずツッコむこと」
「相手がハッタリで攻めてくるなら、こっちもハッタリでかわせ」
・・・とはいえ。まずは強気で行かないと。
これ以上、相手にペースを握らせちゃいけない。


電話を代わるなり私は、友人の妻になりきって、まくしたてた。
「さっきから聞いてりゃ、何ですか!
主人は、数ヶ月前に契約したっきり、サイトを利用したわけでもないのに、
何で今になって、そんな大金を請求されなきゃいけないんですか!
しかも、これまで毎月請求されたわけでもないのに、その督促料まで払えだなんて。
おかしいじゃないですか!絶対に納得できない!」


一方、サイト側の若い男は、
憎らしいほど余裕たっぷりに、ねちっこい口調で語った。
「もしもし奥さん?落ち着いて聞いて下さいね?
電子商取引法』というのがありましてね。
サイトを利用するに当たって、必ず規約に同意を頂くことになってまして。
この課金システムもね、その規約に書かれているんですよ。
で、ご主人は仮登録される際に、規約に同意された。
ご同意頂いた以上は、たとえ規約をよく読まずに同意ボタンを押された場合であっても、
こちらは代金を請求できるんですよね。」


加えて。
「で。うちはローン会社ではないので、
とりあえず一括でお支払い頂けないと、解約できないんですよね。
もしお支払い頂けないようであれば、そちらのIPアドレスを、
消費者金融の保険組合に伝えます。
そうしたら、いわゆる『ブラックリスト』に載ってしまいますので、
借金やクレジットの使用が出来なくなりますが、それでもよろしいですか?」
・・・ふてぶてしいまでに、にこやかな声で脅しを掛けてくるのだ。
腹が立つ!


思いきって、まずはかましてみる。
「請求が高額過ぎて、納得いかないんですよ。
だから、そちらのサイトについて、『消費生活センター』に報告しに行ったんですけど。」
が、相手は笑って言った。
「『消費生活センター』って、あくまで『相談をしに行くところ』ですからねえ。
法的な拘束力があるわけじゃないので、こちらにとっては何の問題もありません。(笑)」
・・・腹立つ〜〜〜!


だが。ここで熱くなっちゃいけない。矛盾をツッコミながら反撃だ。
「実際には利用してないのだから、最初の1ヶ月分だけ請求されるのならわかるが、
それでも、契約してから今までの、数ヶ月分を払わなくちゃいけないのか?」
「契約は、仮登録までしかしてないという。それでも請求されるのはおかしい。」
「毎月利用料を請求されるわけでもないのに、
解約を申し出たら、督促金まで一気に請求されるのは、変じゃないか?」
「本人にはうつ病の診断書が出ている。
しかも当時のことは記憶がなく、いわゆる『精神こう弱』の状態だったわけで、
仮に裁判に出ても、責任能力がないことを理由に、契約は無効になるはずだが?」
・・・しかし。相手はひるまない。
電子商取引法のくだりを繰り返し、なおも支払いを迫ってくる。
膠着状態である。


(つづく)