魚の付く字。


不安たっぷりの異動から、もうすぐひと月。
まだまだ慣れないながらも、入所者の顔を覚え、お名前を覚え、
同僚の皆さんにフォローして頂いて、どうにか仕事やってます。


それでも、
「レクリエーションなら、『昔取った杵柄』で、私でも何とかやれるだろう。」
と気を取り直し、日々奮闘中!
…実は私、大学時代はセツルメントに所属し、
ごっこやドロケーなどの外遊びや、餅つき大会、悩み相談などを通して、
地域密着型の子ども会活動をしていたのさ。


そんなある日。職場の先輩が、ホワイトボードを使ってレクをしていた。
大きなボードの左上隅に、カタカナの「イ」の字を書いている。
…と思ったら、「イ」じゃなくて、部首の「にんべん」だった!
これは、にんべんの付く字を入所者に答えてもらうレクで、
例えば、「本」という回答があったら、
「イ」+「本」=「体」と書いて、
【にんべんに、ほんがつくと、からだになる】
と読み上げる。
この「本」の所にあてる字を、入所者に次々と答えてもらう。


…ハズだったのだが、なかなか回答が出ない。(冷汗)
その上、レクをやっていた先輩が所用で席を外し、私が引き継ぐことに!
目の前には、まったりしたテンションの、認知症の皆さん35人。
…うわぁ。何とか盛り上げねば!(滝汗)


まずは笑顔で仕切り直し。
おかあさんといっしょ」(@NHK教育)の、
「うたのおねえさん」になったつもりで、
テンション高く進行してみる。
こちらが笑って楽しそうにレクをやると、入所者も釣られて笑ってくれるのだ。
ただ。それにまた釣られて、こちらのテンションもどんどん上がってしまい、
気が付いたら、とんでもなく、オーバーリアクションでやってる時あるけど。
この時も、いつの間にか、どこかの予備校の講師みたいに、
激しく板書する自分がいた!


さて。なかなか回答が出てこないので、やり方を変えてみる。
そういえば、漢字の右側の「つくり」の部分って、
言葉で表現するのが難しいものが多い気がする。
じゃあ、こちらで「つくり」を次々と入れ替えて、
それを読んでもらおうかな?


試しに書いてみる。
ボードいっぱいに、
「イ」+「二」=?
と書きながら、読み上げる。
【にんべんに、「に」とかいて、なんとよむ?】
振り返ると、会場は静まり返っている。(冷汗)
入所者も、
「えーと。何と読んだらいいのか。
『ジン』っていうのか、『ひと』っていうのか。」
と困ったような表情だし。
…最初から、読みにくい字を取り上げちゃったね。失敗!


気を取り直して、「キ」【てへん】、「月」【にくづき】でもやってみる。
が、ただ漢字を読むだけなので、イマイチ盛り上がりに欠ける。
そこで、ふと、先日レクでしりとりをやった時、
食べ物ネタがやたら続いたのを思い出す。
「魚」【さかなへん】なら、イケるかも?


早速書いて読み上げる。
「魚」+「青」=?
【さかなへんに、「あお」とかいて、なんとよむ?】
そしたら、書き終わらないうちに、
「サバ!」と元気な答えが!
…これなら、イケる!


ボードいっぱいに板書しながら、
次々「つくり」を書き替えていく。
「弱」と書けば「イワシ!」
「曼」と書けば「うなぎ!」
…さすが、おいしい魚だと、答えが早いね!
出来た漢字は、よみがなを付けて、ボードの隅に書き写していく。
それを書き終わらないうちに、入所者から次々と回答が!
「『参』が付くと『アジ』!」
「『雪』だと『タラ』!」
…そうそう。こういう盛り上がりを期待してたのよ。(嬉)


そのうち、質問も飛び出してくる。
「サケってどういう字?」
…えーと。ちょっと待ってね。ド忘れしてて。
必死で思い出して書く!
確か、こうだ。「魚」+「圭」
見て違和感がない。どうやら合ってるみたい。多分。
…と、落ち着く間もなく、どんどんリクエストが!
「タイは?」これは知ってる。「鯛」
「カツオは?」これもどうにかわかるぞ。「鰹」
気が付けば、同僚の皆さんもギャラリーに交ざって、リクエストして下さる。
「サメは?」知ってます。「鮫」
「クジラは?」これは近所の魚屋さんの名前だった。「鯨」
(正しくは、お店の名は「魚京」【うおきょう】)
最後には、さっき席を外した先輩が、入所者に、
「みんな!好きなお魚の名前言ってごらん!
お姉さんが漢字で書いてくれるよ〜〜〜!」
と煽っている。
…それじゃ、私の方が漢字テストやってるみたいだよ。(苦笑)


すっかり汗だくになって、どうにかレク終了。
気付けば、手にも汗がびっしょり。
水道で手を洗い、ふぅっと一息ついてたら、隣りで同僚に声掛けられました。
「キスって、どう書くんですか?(ニッコリ)」
…どうしても、「鮒」という字しか思い浮かびませんでした!
そりゃ「フナ」だよ。