夏目房之介さん講演「漫画・MANGA・コミック」(序文)

去る6月2日、夏目房之介さんの講演を聴きに行って来ました!


夏目さんは、マンガ・コラムニストとして知られていて、
私は、その夏目さんの20年来のファンなのだけれど、
実は、マンガに関する講演を聴くのは初めてなのだった。
多分、「ナンデモロジー・學問」がファンになったキッカケなので、
「これから・50代の居場所」「おじさん入門」などのエッセイや、
漱石の孫」「孫が読む漱石」などの漱石モノの方が、
夏目さんのお人柄が伝わってくるようで、馴染みやすいのだと思う。
・・・もちろん、「手塚治虫はどこにいる」以来、
「マンガ論」の著作も大好きなのだが。


とはいえ。
「おじさん入門」出版記念トークショー(05.09.30)、
「孫が読む漱石」講演会(06.09.18)と、拝聴してきたので、
機会があればマンガ論ものも聴いてみたかった。
・・・手元にある「BSマンガ夜話まんが道の回」のビデオなんか、
繰り返し見てるし。
手塚マンガ賞10周年記念のトークイベント(06・09・10)、
行けなかったの残念だったし!


そんなわけで、朝から鈍行列車に乗って、ウキウキと上京。
会場は、有楽町マリオンの11階。
そういえば、去年行けなかった、あの手塚賞イベントと同じ会場!
既に客席は参加者でいっぱいだったが、なぜか最前列が空いていた。
・・・いそいそと、最前列中央やや上手寄りへ。
そこ、一番好きなポジションなんです。(嬉)
やれやれ、と、一息ついてホール内を見渡す。
1000人は収容できるほどの大きなホールには、ほぼ満員の参加者が!
しかし、テーマが「マンガ・アニメ」という割には、
例えばBSマンガ夜話の公開収録に比べ、会場内の年齢層が高めだったような。
どちらかというと、日頃マンガを読まなそうな、
60代くらいの紳士・淑女の方々がほとんどで、
真面目な表情で配布資料のマンガのカットを見ている。
その合間に、夜話を見ていそうな、私と同年代の人達もチラホラ。
・・・その雰囲気のギャップが、何だか微笑ましかったり。


さらに!座り直してふと見ると、マイミク:takatakataさん発見!
しかも、彼も私に気付くと、隣に来て並んで座って下さった!
最前列中央にいらっしゃったので、
てっきり今回はスタッフとして参加されているのかと思ったのだが、
「ボク、最前列の真ん中って、子どもの頃から好きなんです。
学生の頃は、案外盲点になるのか、そこにいると滅多に指名されなかったし。」
とのこと。
まさか、お会いできるとは思ってなかったです!ご一緒できて楽しかったです!


ところで。
今回の講演は、人間文化研究機構:主催の公開講演会・シンポジウム
『世界に広がる日本のポップカルチャー 〜マンガ・アニメを中心にして〜』
の一環として行われたもの。
人間文化研究機構」とは、
大学の人間文化系の学部のための、全国に16ヶ所ある研究機関の元締めなのだそうで、
年2回シンポジウムを行っているという。
・・・そう言われれば、教授風の人が多かったなぁ、と納得。
主催者側の冒頭の挨拶によれば、去年のテーマは「近代の手紙」だったそうな。
それもなかなか面白そうだが、
「前回が『近代』だったから、今回は思い切って、
『現代の文化』を取り上げることにした。
今、海外で影響の強い日本のポップカルチャーといえば、圧倒的にマンガ・アニメ!」
というのが、今回のテーマ選択の動機だとか。
・・・そりゃ、思い切ってるなあ。
隣に座っていた、60代の研究者風の淑女なんか、
挨拶から高イビキで爆睡してたよ?(苦笑)


さて。挨拶がおわると、司会の方から、
「今回は、大変実験的な試みなので、専門家による現状報告から始めたい。」
との説明が。


国際日本文化研究センター山田奨治準教授から、
「世界に広がったマンガ・アニメ」と題して、15分くらいの短い発表があった。
山田氏は、外国との文化交流がご専門だそうで、
アジアやアメリカで、日本のマンガやアニメが、
日本側の出版者や作者の意向を離れて「広がってしまった」という現象について、
ご自身の体験も踏まえ、わかりやすく説明されていた。
・・・その主な内容を簡単にご紹介。


●日本のマンガやアニメには、暴力や性の表現が多く、
「マンガ・アニメは子供向けのもの」という考えが強い諸外国では、
「子供に見せられない」として、
該当シーンをカットしたり翻訳を勝手に変えたりしていたことがあった。


●東アジアでは(韓国を除く)70年代くらいから、ドラえもん海賊版が見られた。
80年代には、様々な日本マンガの海賊版が、世界中に広がっていき、
その状況は、出版許可を管理するシステムが日本の出版社に整備される、
80年代後半まで続いた。


●80年代には、アメリカ人の熱心な日本アニメファンが、独自にセリフを翻訳・吹替をし、
ファンが勝手にサブタイトルをつけたもの(「ファンサブ」と呼ばれる)が出回っていた。
近年ではそれを、無断でネットで流すファンもいる。
もちろん遺法だが、皮肉にもそれが、
日本作品が世界に流通するキッカケにもなっている。


●作品が、その国に受け入れられやすくするため、
「現地適応化」の名の下に、とんでもない改造がなされることもある。
例)アメリカでは「マクロス」が、
他のロボットアニメ2作品とミックスして編集、放送された。
「ヤマト」はテーマを大幅に省略され、「ナウシカ」はただの勧善懲悪モノに。


●このため、「日本アニメが海外で人気」と言っても、
同じ作品でも、日本人とアメリカ人が見ているものは違う、ということもありうる。



・・・隣でtakatakataさんが淡々と聞いている。
フランスでの日本マンガの流通に携わっている彼にとっては、
一般常識的な内容なのかもしれない。
でも。私にとっては、この時点で初めて聴く話が多くて、既にビックリ。
マクロス話の時は、山田氏もホントにガッカリした感じが伝わってきて、
同世代の聴衆から、「ああ・・・。」と、同情の溜息が。



さて。長くなってきたので、本編は次回に。(つづく)