夏目房之介さん講演「漫画・MANGA・コミック」(2)


そういえば、山田氏の発表の直前、
突如スタッフが数人出てきて、演台を上手寄りに移動させていた。
直後、プロジェクターが、パソコンのパワーポイント画面を映し出す。
・・・なるほど。図版を解説するのに、背面のスクリーンを使うので、
影にならないように、演台を脇によけたわけね。


そんなわけで、その演台が、丁度私の目の前に来た。
プロジェクターが「あしたのジョー」の表紙を映し出す。会場がにわかに湧き立つ。
・・・いよいよ、夏目さんの登場である!
(ちなみに、夏目さんご本人のブログの記事と、当日のレジュメはこちら。
http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2007/06/post_8178.html


私にとっては、いよいよ真打ち登場!テンションはググッと上がる!
しかも立ち位置がすぐ目の前なので、私のテンションは更に上がる!
・・・一方ご本人は、落語家の師匠のように飄々と登場。
ふっと向き直った時、目の前に並んでいたのは、
ご友人のtakatakataさんと、始まる前から身を乗り出している私と、
爆睡して椅子から転げ落ちそうになっているご婦人。
・・・ちょっとギョッとしたかも。


夏目さんは、前日にご自身のブログで、
メンタル面を含め、体調を崩している旨を書いてらっしゃって、
そのせいか、序盤はややペースを抑えながら進行していたように見えた。
しかし、後半からだんだんノって来た感じで、口調がなめらかに。
聴いていて楽しいし、内容もわかりやすくまとまっていて、メモが取りやすい!
一方で、時間ピッタリに終了するのはさすが!
・・・マンガ学会でのプレゼンを控えているtakatakataさんが、
「さすがだなあ。なかなか、時間きっかりに話をまとめるのは、
ペース配分が難しいんだよ。」
と、しきりに感心していたのが、印象的でした。


それでは、当日のメモから、その内容をご紹介!
・・・ここまで来て、やっと本題です。(苦笑)
各項目のタイトルは、私がメモを取る上で便宜上付けたもので、
夏目さんのレジュメとは異なります。ご了承下さい。


とはいえ。マンガにはあまり詳しくない私のことなので、
けっこう、とんちんかんなメモになってるかもしれませんが。

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●「マンガ」と呼んでいるメディア
「マンガ」とは、紙の上に西洋式の活版印刷によって印刷された媒体であり、
19世紀に生まれたもの。
(筆者注:中世の木版印刷によるものとは区別される。)
社会が近代化していく中で成立したものであって、
「ウエスタンインパクト(=西欧の衝撃)」によって成立したものの一つ。


一方、日本マンガが複数のコマの連続で物語を構成していることが、
後年海外では、衝撃的に取り上げられた。


欧米では従来、コマが連続する本は低俗な扱いをされ、
一般書店に並ぶことはなかった。
しかし、「一般書店で扱える内容のもの」というニュアンスを込めて、
マンガが「グラフィック・ノベル」と呼ばれることも。



●日本マンガのルーツ
幕末にアメリカの雑誌社が「ジャパン・パンチ」を創刊。
その中の「風刺絵」が人気で、真似したものが流行った。
一方でそれをバカにした「ポンチ絵」という呼び名も。
それに反発した作家達が、作品を「漫画」と呼び始めた。


大正時代には、少年向け雑誌が創刊。
「ノンキナトウサン」などの作品が生まれ、様式が統一され始めた。
この時代の漫画は、新聞漫画の様式が元になっている。


(図版1)

上段は、麻生豊「ノンキナトウサン」第6集より。これは左→右に読む。
何故かというと、セリフが横書きだから。欧米マンガの真似をしているため。
ただ、当時としては、これはかなりモダンな表現だったと思われる。
(参考:下段は、同時期の作品・岡本一平「漫画小説・人の一生」。
吹き出しはなく、絵物語のようである。)
やがて、セリフがだんだんタテ書きになっていく。
いわゆる「日本化」(=ナショナライズ)。
しかし、今日では、世界的にはセリフはほとんど横書きで、
マンガを右→左に読むのは、日本と台湾だけ。


(講師注:このように、ある様式が、
その国に伝統的にあったものと融合することは、マンガに限らずよくあるが、
それと「その国独自の様式」とは別物なので、区別して考えるべき。)



●呼び名の違い
「バンド・デシネ」(=BD)
→ 「つながっている絵」の意。コマが連続しているものを指す。


「カートン」
→ マンガ・アニメ両方を指す。(使われ方が曖昧)


このように、場によって呼ばれ方が違い、定義もされてないので、
呼び名が混乱している。


●マンガとアニメ
別物ではあるが、相互に影響し合っている。
いずれも、映画の影響を受けている。



(つづく)